姉川と妹川のお話し
作成:筒井杏正

 昔、伊吹山から国見峠に通ずる山腹に姉池、西向かいの七尾山の山腹に妹池という2つの大きな池があったそうじゃ。この2つの池は、唐国の姉竜と妹竜が住んでいる池に似ているということから名づけられたいわれるのじゃが、よ〜くは分からん。
 ある年のことじゃ、伊吹山と七尾山の周辺に豪雨と長雨が三ヶ月以上も降り続いたため、2つの池は今にも溢れそうになり、溢れればふもとの村の家も人々もたちまちに流されてしまうということで、大変な騒ぎとなったんじゃ。
 この時、どこからともなく二人の美しい姉妹が村人の前に現れてのう・・「私たち二人が、それぞれに2つの池の龍神さまにお会いし、この長雨を鎮めるようにお願いいたします。どうぞご安心ください。」といって2つの池に着くと、身を投じ、龍神に身を捧げたそうじゃ。
 するとなんと不思議なことに、姉妹は2ひきの竜となって、それぞれの池から現れ天高く舞うと伊吹山と七尾山の山合いを2手に分かれ、滑るように琵琶湖へと下っていったんじゃ。

伊吹山から琵琶湖にかけて広がる肥沃な湖北地方
 姉妹が下った2つの通りは、たちまち川となって、溢れそうになった2つの池の水を流し始め琵琶湖へと注ぎ、また降り続いた雨もピタッと止み、立ちこめていた暗雲もすっかり立ち去り、青空が広がったそうじゃ。

 このことから姉竜が通ってできた清流は「姉川」、妹が通ってできた清流は「妹川」と呼ばれるようになったんじゃ。ちなみに「妹川」は、七尾山麓を伝い流れる今の「草野川」のことじゃな。
 それにこの2つ川ができたことで、その流域は肥沃な土地となり、今の美味しい米や野菜が作られるようになったそうじゃ。