伊吹山の自然と四方山話 伊吹山の外来種タンポポ

伊吹山に侵入する外来植物のおはなし
★伊吹山に侵入する外来植物 
アメリカセンダングサ、アメリカヤマゴボウ、アラゲハンゴンソウ、アリタソウ、アレチヌスビトハギ、イヌホオズキ、イブキカモジグサ、イブキノエンドウ、エゾノギシギシ、オオアレチノギク、オオアワガエリ、オオニシキソウ、オオハルシャギク、オニウシノケグサ、カモガヤ、キダチコンギク、キバナノレンリソウ、コセンダングサ、シロツメグサ、セイタカアワダチソウ、セイヨウタンポポ、タカサゴユリ、ノボロギク、ハキダメギク、ハルガヤ、ハルサキヤマガラシ、ハルジオン、ヒメジョオン、ヒメスイバ、ヒメムカシヨモギ、ブタクサ、フランスギク、ベニバナボロギク、ヘラオオバコ、マメグンバイナズナ、マルバルコウ、ムラサキツメクサ、メマツヨイグサ、メリケンカルカヤ
★赤字は日本の侵略的外来植物ワースト100、★茶色は外来生物法が示す要注意外来植物
※内、イブキカモジグサ、イブキノエンドウ、キバナノレンリソウは、信長時代にポルトガル宣教師によって作られたと伝わる伊吹山薬草園に由来するユーラシア原産の帰化植物。

■参照ページリンク
 a-1.2008年外来植物侵入追跡調査  a-2.2008年登山道外来植物侵入追跡調査
 
b.2013年調査DATA   c.外来生物法要注意外来植物  d.

1. セイヨウタンポポ   2. ヒメジョオン   3. ハルサキヤマガラシ

<その一> 山頂を占領したセイヨウタンポポ
文・写真・挿絵:筒井杏正 (登山道調査データ/2008.4)
■セイヨウタンポポ(西洋蒲公英)キク科・タンポポ属


セイヨウタンポポの日本への侵略
 明治時代に渡来し、今では、どこでもふつうに見られるのはヨーロッパ原産のセイヨウタンポポとなってしまった。(※その他、外来種のアカミミタンポポもある)
伊吹山頂もついに占領
 このセイヨウタンポポは、今から20数年前、伊吹山頂に向かって徐々に侵入しはじめ、そして、今はすっかりこの花におおわれるようになった。
 そして、現在では、日本生態学会が日本の侵略的外来種ワースト100の一つに選定している。


・花を支える首のような(外総苞片)が下に反り返っている。日本のタンポポは、すっきりしている。
在来種と外来種の違い
在来種
外来種
・アルカリに弱い
・有性生殖
・虫の助けで受粉する
・春だけに花が咲く
・種は夏寝する
・アルカリに強い
・単為生殖
・受粉の必要はない
・春と秋に花が咲く
・種はすぐに発芽する
さらにセイヨウタンポポは強い!
・1つの花にできる種子は、セイヨウタンポポの方が在来種より2倍多い。
・種子の発芽率もセイヨウタンポポの方が高い。
・遠くまで種を飛ばせる。
 このようなことから、セイヨウタンポポの増殖度は、自然環境のバロメータと言われる。
 そして、今では自然環境に影響をおよぼす日本の外来植物ワースト100の一つに指定されている。


<伊吹山での分布>
・伊吹山DW〜山頂駐車場までの沿道に満遍なく生育
・山頂の西・中央遊歩道に満遍なく生育
・山頂山小屋周辺に群生
・登山道には、1・3〜4合目に群生
・4合目以上は、まばらに生育


<侵入した主な理由>
 自然環境が悪くなった代表的な要因は以下のことが考えられるよ。
1. 伊吹山ドライブウェイが開通し(昭和40)、多くの車で人やペットがセイヨウタンポポのタネを運んだ。(登山道は、ドライブウェイに比べかなり少ない)
2. 山頂の山小屋付近は、来山者の踏み跡による裸地が広がり、セイヨウタンポポが繁殖しやすい環境を作った。
3. ペット連れでペットの糞尿を放置する行為。また、空き缶や弁当の空殻などのゴミを散らかす行為で、土壌が富栄養化している。


 2010年の伊吹山頂部の踏込地における本会の調査では、セイヨウタンポポの被度は96%、在来種タンポポ(イブキタンポポ=固有種・セイタカタンポポ)は、わずか4%であった。

 ●伊吹山の在来種タンポポは、開花期(5/中〜6/初)が短いし、昆虫などによる受粉がないとタネができない。また、綿毛のタネも重いからあまり遠くへ飛べない。
このため、セイヨウタンポポがますます優勢になる。


・2006と2008年、除去が試みられたが、タンポポのメカニズムを充分把握せずの除去作業のため失敗に終わった。
・「伊吹山自然再生協議会」の2010年方針は、背丈の高い草地である花畑へのタンポポの侵入はないとして、今のところその対応策は図られていない。


・ 発芽率などから計算すると、在来種のイブキタンポポやセイタカタンポポは絶滅する可能性もある?
・在来種は、有性生殖をするため環境に適応する突然変異ができやすい。
・セイヨウタンポポの性質を取り込んだ雑種と思われるタンポポが登場して来ている。